Canon AE-1 その2

Canon AE-1の主な特徴は次のとおりです。

  1. 中央電子演算回路(CPU)によるカメラ全体の制御を全体的に行う方式を採用しました。ただしCPUといってもいわゆるデジタル方式のマイクロコンピュータではありません。
    いままで電子化技術は自動露出(AE) などの機能単位にとどまっていましたが、カメラ全体の動作シーケンスに基づき各機能を連携させ、その処理をCPUが一括して管理する方法を初めて採用したのです。そのため当時の技術で可能であった機構部品を徹底して電子制御部品へと置き換えました。その結果機構部品を中心に部品点数の大幅な削減 (Canon FTb比で約300点もの削減)が可能となり、小型軽量化が可能になりました。
  2. シャッター速度優先AE方式を採用。
    これはキヤノンやニコン、コニカなどのメーカーが主張していた方式で他社の絞り優先AEに比較して優れた方式だというメーカー側の考え方を反映しています。手ぶれ防止やAF機能のなかった時代ですから、シャッター速度を最初に決めておくという方が撮影者にとってわかりやすかったのかも知れません。撮影シーンによってどちらを重視すべきか決めるという現代の両優先方式(Tv/Av)がまだ成り立っていなかった時代の話です。
  3. 測光センサー(受光素子)を、従来のCdSセルから、SPC(シリコン・フォト・セル)へ変更。
    自動化を推し進めた結果、低照度下でのスローシャッターも電磁制御で正確になりました。その結果、FTbやPELLIXで別売オプション設定されていたブースターを廃し、低照度測光を最初から可能とするために高感度のセンサーに置き換えました。それから公害物質であったカドミウム系のCdSを使いたくなかったという思いもあったのではないでしょうか。
  4. 露出計に関しては、キヤノンお家芸の中央部分測光方式をやめ、ファインダーの上部に受光素子を配置する中央部重点平均測光方式に変更。
    この点が今もって謎の部分です。1964年にPELLIXで採用し1966年のFTで技術確立をみた画面中央の12%を測光する中央部分測光方式は、フラッグシップのF-1にも採用され、キヤノンは自信を持っていたはずです。それをなぜ捨てて中央部重点平均測光に切り替えたのでしょう。当時のSPCセンサーの高感度化が十分達成できず、低照度対応とするにはカットコンデンサーの反射光では光量が足りなかったのでしょうか。数年後のNew F-1ではSPCセンサーながら中央測光やスポット測光が復活していますが。
  5. 距離計として、スプリット・マイクロプリズム方式を採用。
    ファインダーにハーフミラーを置かず同中央部分の暗さが解消したため、クイックにフォーカスを合わせやすいスプリットイメージ距離計をCanon FX以来久しぶりに復活。従来の暗いレンズでも比較的強いマイクロプリズムをスプリット周囲に置くという凝った作りでした。
  6. シャッターは全速電磁制御とし、電子演算回路により制御する方式としました。またセルフタイマーも電子タイマーに変更。
    それ以前の電磁制御は、キヤノン初のAE一眼レフカメラである、Canon EFで採用されていましたがこれはあくまで1秒以上のスローシャッターのみを電磁制御とするハイブリッド方式でした。これを全速電磁制御とすることでシャッターの精度や安定性が極めて向上し、別売のワインダーと組み合わせることで全速毎秒2コマの連写をすべて自動露出(AE)で撮影可能になりました。
  7. CATに代わる、新しいフラッシュオート(キャノンスピードライト155A別売)。
    現代のようなTTL自動調光のような機能はありませんが、ストロボのプリチャージが完了すると自動的にシャッター速度を1/60秒に固定し、絞りをストロボ側で設定した値に決めることができました。そのためストロボ側に独自のセンサーが内蔵されているほか、アクセサリーシューにはX接点の他に専用のフラッシュ・オートシステム用信号ピンが追加されています。その位置もCATと間違えないように異なる位置に設定されました。
  8. オートワインダーA(別売)により毎秒2コマ程度の連写機能(フィルム自動巻き上げ)。
    これが有名なキャッチコピーである【連写一眼】の部分です。AE-1はもっと画期的な部分があったのですが、当時はコンピュータ制御とか電子制御の自動露出(AE)システムというメッセージは消費者に伝わりにくかったのかも知れません。また当時はEEカメラというのは初心者向けと揶揄される風潮にあったので、それを心配したのかも知れません。でも果たせるかな、この【連写一眼】のフレーズは長くユーザの記憶にとどまる単語となっていきました。

このような大幅に電子化を行ったAE-1は、機構部品の大幅な削減を可能としたばかりでなく、各ユニットのブロック構造化も実現しています。特にミラー、AE機構部、自動絞りなどの各ブロックは、組み立てラインの工程を簡素化・高精度化するために部品設計されているなどの工夫が見られます。加えて機構部品点数が少なくてすむということは、部品開発経費の削減、直材費(コスト)の削減、部品在庫管理や維持経費の削減、工程数の削減、生産にかかる時間を短縮、組み立て精度の向上と均一化、品質信頼性の向上、メンテナンスフリー化、など商品としての価値とともにメーカーとしてのメリットもたいへん大きかったのです。

 

その結果、AE-1は発売当時他社のAE一眼レフカメラと比較して定価で約2万円近くも安い設定で販売されました。それがブームを引き起こす一因となったことは否めないことだと思います。

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