Canon FX

1964年(昭和39年) 4月発売

Canon FX (Canon FL55mm F1.2 付き)
Canon FX (Canon FL55mm F1.2 付き)

【行動派の選ぶ軽快な高級一眼レフ】

日本初のオリンピック競技大会として、東京オリンピックが華々しく開催され、また夢の超特急と言われた東海道新幹線が走り始めたのは昭和39年10月のこと。二つの大きな出来事を半年後に控えた同年4月、このCanon FXはキヤノン第二世代の一眼レフカメラ・シリーズとして登場しました。

 

それまでのキヤノン一眼レフは、1959年(昭和34年)に発売されたフレックス・シリーズがありましたが、既に発売されていた旭光学のアサヒ・ペンタックス(AP)やキヤノン・フレックスと同じ年に発売されプロカメラマンから絶賛されたニコンFといった名機の影に隠れ、評判としても今ひとつだったと思います。

 

Canon FXでは、そうした状況を打開すべく、大幅な改良を施して登場しました。

 

  1. レンズ・マウントを、TTL測光時代に備え、自動絞り機構を改良。FL レンズとし、レンズ・ラインアップを一新しました。
  2. 露出計の測光センサーにCdSを採用して、測光精度を向上させカメラ本体に内蔵させました。 さらに表示をシャッターダイヤルと連動させることで、適正絞り値の表示を見やすくしました。
  3. フィルム巻き上げレバーなどを軍艦部に配置し、他社と同様にして扱いやすさを目指しました。
  4. ボディーのデザインも一新してシリーズ製品化する体制を整えました。

 

ところがこの時点でもまだキヤノンの技術は他社に追いついてはいませんでした。Canon FX発売の1年前(昭和38年)、東京光学からTOPCON REスーパーという世界で初めてTTL露出計を内蔵した一眼レフカメラが登場、それを追うように昭和39年には旭光学からPENTAX SPという同じくTTL露出計内蔵の一眼レフカメラが発売。既に時代はTTL露出計内蔵が当たり前になってきていたのです。

 

キヤノン初であるTTL露出計内蔵の一眼レフカメラとして、Canon PELLIXが発売されたのはFX発売1年後のことでした。

Canon FXに採用されたFLマウントは、それまでのRマウントの自動絞り機構を大幅に変更したものとなっています。マウント自体の基本構造は口径も含めて同じで、リングを回すことによるレンズ脱着の仕組みはスピゴットマウントとも呼ばれ、バヨネット・マウントの一種でもあります。レンズ脱着の際にマウント自体は回転することがないため、レンズ交換の多いヘビーユーザが使用してもマウントの固定精度を高く維持できるというのがセールスポイントでしたが、加えて複数台のカメラを同時に使用するスタジオ撮影家などでは片手でレンズを換えるのに便利だという声もありました。

 

自動絞りの機構はレンズ側のレバーをカメラ本体のマウントに装着されたアームで引くことにより絞り動作する仕組みとなっており、この仕組みはNew FDレンズまで互換性を持っていました。1996年にFDレンズの販売を完了するまで、実に32年間にわたり同一規格の自動絞りメカニズムが維持されていたわけです。

 

TTL測光とは、Through The Lens 測光の略です。フィルム面に実際に当たる光の量を測定することは最も理想的とされ、それは撮影に使用されるレンズを通過してきた光を測定することを意味するわけです。カメラ技術の発展史の中で、このTTL測光技術は自動絞り技術などと共に、重要な発明とも言えます。1960年のフォトキナで旭光学によりTTL測光技術は発表されました。1960年代後半では殆どすべての一眼レフカメラはTTL測光の仕組みを搭載しており、今のデジタル一眼レフカメラでもすべてがTTL測光方式を採用しています。

 

ただ、本稿のキヤノンFXではまだTTL測光方式になってはいません。レンズとは別にボディ軍艦部右側にある測光専用の円い窓から別途取り込んだ光を元に露出計を動作させます。カメラ側で連動していた部分はシャッターダイヤルとフィルム感度設定ダイヤル(ASA /ISO)でした。

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