i8085(A)   MCS-85 8ビット・マイクロプロセッサ

組込み型市場に歓迎された、8080A上位互換のプロセッサ

i8085
i8085
  • 1976年3月発表
  • クロック周波数:3MHz
  • 処理ビット数:8ビット
  • 集積トランジスタ数:6,500個
  • 半導体プロセス:3μm   N-MOS

i8080Aの後継モデルをめぐっては、インテル社内で意見の対立があったようです。i8080Aをもとにより一層性能を高めたプロセッサを開発すべきであるとしたグループと、i8080Aをもとにより集積度を高めて便利に応用できるプロセッサや周辺機能を作るべきだとするグループです。結局前者の主張を持つ人々はインテル社を退社し、あらたに石油ファンドの資金を得て主張を実現するための半導体メーカを創立します。それがザイログ(Zilog)という会社で、そこで生み出されたZ80と呼ばれるi8080A上位互換のマイクロプロセッサは、大ヒットしインテル社を主役の座から引きずり下ろしました。

 

一方インテル社は先の選択で後者を選んだわけです。そしてインテル社としてのi8080A後継プロセッサがこのi8085として登場したのです。

 

i8085はMCS-80チップセットが機能ごとにデバイスが分かれているのをやめて、最低3個(CPU含む)のチップセットのみで完全なマイクロコンピューター・システムを構成することができ、しかもLSI技術の流れである、5V単一電源設計とすることで、供給電源を含めてMCS-80よりも遙かに省スペースなコンピューター・システムとして様々な用途に対応するべく設計させました。

 

組み合わせる新しいチップセットとしては、ROM+I/Oとして8755/8355、RAM+I/Oとして8155が開発されました。ROMとしては2KBのUV-EPROM(8755)もしくはマスクROM(8355)。RAMとしては256バイトのSRAMが8155に搭載されていました。そのほか8155にはタイマカウンタも内蔵されています。i8085を含めこれら3個のチップセットはいずれも40ピンDIPに封入されており、MCS-80よりもはるかに実装面積は低減されました。

 

確かに組込み型アプリケーションとしてはMCS-85の方向性は応用しやすく実際に国内でもキャッシュレジスタやPOS端末、プリンタなどに数多く応用されましたが、マイクロコンピュータ・システムでパーソナルコンピュータを目指す人々には受け入れられませんでした。それはMCS-80の各周辺素子に比べてMCS-85の各機能は機能や性能が大きく後退してしまっていたからでした。

 

そこにZilog社よりi8080Aの命令セット拡充と性能向上、5V単一電源などの特徴を持ったZ-80が発表され、パーソナルコンピュータは続々とこのZ-80を採用し、8ビット系パソコンの世界はZ-80とモトローラ系の6809との一騎打ちになっていきました。その一方でi8085にMCS-80の周辺素子を組み合わせたパソコンは少数派だったのでした。

1979年(昭和54年)5月、日本電気から衝撃的な発表がありました。本格的な"パーソナル・コンピュータ"、PC-8001が登場したのです。それまではあくまでキットで組み上げるTK-80やそれをベースとしたBASICコンピュータ(TK-80BS, Combo-BS等)がありましたが、PC-8001は個人向け汎用コンピュータ・システムとして、パーソナル・コンピュータもしくはパソコンという名称を使い始めた元祖であるといえます。マイクロソフト社のBASICを基本搭載しているほかに、フロッピーディスク・システム前提のOSであるCP/M(米デジタルリサーチ社)なども利用できるシステムでした。このPC-8001には日本電気が再び模倣したμPD780-1(Z80A互換、4MHz)が搭載されていました。その他でも、この時代に発売されたSHARPのMZ-80であるとか、東芝のPasopiaなど、いずれもZ-80互換のCPUを採用しており、i8085ベースのものはありません。

 

しかし日本の半導体メーカもZ80互換品を開発する一方で、インテルの動向にも追従するためにi8085を模倣した互換品を作りました。そのための評価用開発ボードは別途商品化しています。たとえばTK-80の後継としてTK-85という、TK-80機能互換のボードが日本電気から販売されていました。

 

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