コラム:BOSEとQC15ヘッドフォン②

BOSE PAM-3
BOSE PAM-3

 僕はどちらかというと後者の立場であった。最初にBOSEを知った頃、まだ世の中はデジタルオーディオの世界ではなく、ノイズとの闘いの中にあった。だからノイズがあっても自分の耳がそれを聴き分けていたのだ。そうした環境に長い間慣れていると、BOSEの音は新鮮な驚きであったものの何か作為的なものを感じたのである。しかしその後パソコンに接続して楽しむDTM(デスクトップ・ミュージック)という趣味を覚えた頃に初めてPAM-3というパワードスピーカーを購入した。

BOSE 101MM
BOSE 101MM

 こいつはあの有名な101の進化型である101ITというモデルのスピーカー・エンクロージャーにアンプを仕込んだもので、当時の感覚からいうと小型のスピーカーボックスからは信じられないくらい豊かな低音を鳴らしてくれた。DTMは電子楽器としてのシンセサイザーのようなものだから、所詮人工的な音なのでBOSEにはベストだと思ったのである。果たして思ったとおり他のパワードスピーカーではあり得ない密度の濃い音を体験させてもらい大いに満足したものである。でも自分の中ではBOSEはクラシックに不向きであるという考えを持っていたので、その後も自宅のオーディオ装置としてのメインに据えることはなかった。むしろ真逆のHARBETHという英国のメーカー製スピーカー(HL Compact 7)というアコースティック楽器をスピーカーにしたようなモデルをメインに据えたくらいである。


 BOSE自身もこのような自社製品の特性について理解していたようで、クラシック向けと謳った製品を出している。結構鳴り物入りだったので僕も早速聴きに出かけたのだが、どうしても買う気にはなれなかった。音像がぼやけていてどこか圧縮されたような音がした。


 ところが時代が変わってデジタルオーディオの世界になり、しかも自分のライフスタイルも通勤時に音楽を聴くことがメインになってからBOSEへの評価が一変したのである。最初のうちはステレオ・イヤフォンを利用していたのだが、自分の耳にフィットせず苦労していた。音質を語る以前に何度となくポロリとイヤフォンが外れてしまい、閉口していたのである。そののちに今でいうインイヤー型のイヤフォンが現れて早速購入したのだが、今度は音質に閉口することになった。イヤフォンは小型で装着した見栄えも悪くないため今でも多く使われているが、ドライバーユニットが小さいためやはり再生能力には限界がある。最近では大口径のドライバーユニットが使われたり改善は進んでいるのだが、逆に音漏れが酷くなる。通勤しているとわかるのだが、音漏れの大きいイヤフォンは周りの乗客には大きな迷惑だ。なので残念ながらそういうイヤフォンは使いたくない。高音質で評判のSHUREといったメーカー製インイヤーも試して見たが数万円も出して購入するほどの価値を見出すことは出来なかった。

BOSE Quiet Comfort 2
BOSE Quiet Comfort 2

 ところがQC2は密閉型でありながらカップはギリギリまで小さい。そのくせにダイナミックレンジが広く低域から広域までしっかり表現されていると思えた。さらにノイズキャンセルも十分かつ自然に周りの音を上手く消してくれるので、繊細な音も周りの音に消されず聴くことができると感じられた。その時すでに数社からノイズキャンセル型のヘッドフォンが販売されていたが、その殆どがノイズキャンセル性能にばかり重点を置いて肝心のヘッドフォンとしての音質は今ひとつであった。そのためこのQC2の魅力は益々僕の中で大きくなっていったのである。


 そしてQC2を購入した。BOSEには他にもオンイヤー型のQC3というノイズキャンセル型ヘッドフォンがあり、こちらも市場では評価が高いようだが僕は好きにはなれなかった。ノイズキャンセル効果はこちらの方が高かったが、明らかに再生音の明瞭度が落ちていたし妙に低音のブーストが目立って気持ち悪かった。圧倒的にQC2の方がリニアリティがよく気持ちよく音楽を奏でていたのである。

 

              ③へ続く

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