JR東海が、遠距離恋愛の切なくも美しい光景をCMに描いたのは、今から二十年余り前、1987年のことでした。
遠く離れた二人が、互いの心を確かめ合えるのは週末だけ。二人の想いが高まるほど別れの辛さは増すばかりです。今でこそ携帯電話にメール、パソコンと二人を繋ぐ道具は溢れているけれど、そのころは二人を繋ぐものは長距離電話と手紙しかありませんでした。いつでもどこでも相手と話せる今と違って、すれ違いの日々が続いていたのです。
週末の夜東京駅新幹線改札口。何も語らず互いに見つめ合う二人の姿がありました。家路を急ぐ雑踏の中で、二人の周りだけ時間も空気も止まっていました。二人に語ることはたくさんありました。でもあまりに語ることが多すぎて、語る時間も少なくて。だから見つめ合うことですべてを伝えようとしていました。
あと少しだけ、もう少しだけ二人に時間をください。でも二人の想いを無情にも断ち切る発車のベルが鳴り響きます。ホームから何かを伝えようとしている女の子の姿に、車掌さんもドアを閉めるのをためらいます。
東京発21時00分。最終の新大阪行きひかりは、いつしかシンデレラ・エクスプレスと呼ばれるようになりました。
撮影機材: Canon EOS 5D MarkII ;
EF24-105mm F4L IS USM, EF135mm F2L USM