TC-110A (TC-100B Magazine Matic EM 100)

SONY初のコンパクトカセットレコーダー・ファミリー

TC-110A (海外モデル)
TC-110A (海外モデル)

SONY Compact Cassette Corder

 

・TC-110A

  昭和46年(1971年)海外にて発売

  本モデルは1974年に製造を終了しています。

 国内モデルはTC-100B

 

TC-100ファミリー製品には、国内モデル4種、海外モデル3種が販売されました。

<国内モデル>

・TC-100             1966 - 1967

・TC-100A           1968 - 1968

・TC-100B           1968 - 1969

・TC-100F            1970 - 1970

<海外モデル>

・TC-110            

・TC-110A            1971 - 1974

・TC-110B            1977 - 1981?

 

本機はソニー・カセットレコーダー史の最初を飾る、TC-100シリーズの一員です。時期的には後期モデルに近く、さらには海外専用モデルとして1971年から1974年までの間輸出され特に欧米各国で販売された機種です。本機は写真でご確認いただければわかりますが、最初からカナダ向けとして製造され輸出されたようです。その輸出先のカナダにて40年余りの歳月を経て、いま故郷の日本へと里帰りをしてきました。

 

TC-100シリーズは私の知る限り全部で7機種が開発・販売されました。その原点は付加記号が何も付かない、素のTC-100です。このモデルはSONY初のコンパクトカセット・レコーダーとして、1966年に発売されました。このときはたぶん規格開発元のオランダ・フィリップス社と、日本のアイワ(AIWA)が発売を始めた直後くらいでした。技術的にも当時の部品をとにかく詰め込んだという感じだったようですが、デザイン的にはフィリップス社のレコーダーのように平置き縦型のデザインながら、アルミフレームをボディパネルのコアとして使い強度を出しながら、黒のプラスチックでコントラストを強めて精悍に仕上げ、ピアノキーというカセットレコーダー操作ボタンの基本形をここで確立したというなかなか意欲的なデザインでした。そのデザインを踏襲しつつすべてのTC-100シリーズ・モデルは開発されたのです。

 

写真にもありますが、実際手にとってみると想像していたよりも本体は小さめで、ずっしりとした重さが印象的です。この時点ではまだイジェクトボタンはピアノキーに割り当てられておらず、専用レバーが用意されていますが、レバーにてプッシュ・イジェクトする方法は当時としては新しい発想だったようです。

 

本機のモデル名はTC-110Aですが、情報を照合してみますと外観では国内モデルのTC-100Bに似ていますが、実はこれをベースに1970年頃の新しい技術を積極的に取り込んでいたことがわかります。それは主に次のような点です。

  • TC-100Bに似ている点は、TC-100にECM(エレクトリック・コンデンサー・マイク)と、テープカウンターを内蔵させていること。
  • TC-100では早送りと巻き戻しボタンは押してもロックせず、指を離すと元へ戻ってしまう構造でしたが、本機はこれらの操作ボタンは軽く押すと元へ戻り、強めに押せばロックします。
  • TC-1177以降、巻き戻しボタンに"REVIEW"機能がつきました。これは再生中に巻き戻しボタンを軽く押すと、音を出しながらキュルキュルと巻き戻しが行われ、何回でも聴き直したいという要望に応えるものでした。その機能が本機にも付いています。
  • ヘッドブロックは、TC-1160やTC-1170/1177にそっくりです。1970年前後で流行っていた、エンドアラームのセンサーが備わっています。
  • 本機の回路は確認しておりませんが、SONYのロゴの下に、"IC+SOLID STATE!"と記述されています。おそらくSONYのカセットコーダーにICが使われ始めたのも本機が最初くらいではなかったかと思われます。当時ラジオの主力機種にやっとICが使われ出した頃でした。
  • 本体のACコード接続プラグが、やはり1970年当時に流行っていた、4極プラグであることです。これを最初に採用したのはTC-1160(1968年末に発売)だったと思います。

一見、本機はTC-100Bの海外モデルなのかなと思っていましたが、こうして実際に手に取ってみると疑わしい点も数々あり驚きました。しかし国内向けモデルであったTC-100Bの情報が極めて少なく、比較できずに困っています。ただTC-100Bが生産されたといわれる1968-1969年ころにままだなかったと思われる技術がいくつか見受けられますので、日本国内向け主力モデルがTC-1160/1170などに採用された平置き横型デザインへと移行した後も、輸出向けに改良した機種として投入されたのではないでしょうか。

 

カセットを入れて再生してみました。出てきた音は当時のカセットレコーダとして普通の音でしたが、各操作にもきびきびと動作し、ボリュームやトーン調整に対してガリもなくノイズも出ず、コンディションとしては最高の部類にはいると思います。昭和40年代中頃の製品として、また以後の黄金時代を築いて行くSONYとして、誤差がなくきちっと造り込まれた外装を含め、品位とMade In Japan生産技術への自負が感じられます。特にアルミパネル外装を折り曲げたときに出来る丸め(アール)に対して隙間なくピタリと合わせられたプラスチックの丸めは、コンピュータ管理のNC製作機器がなかった当時でもここまできっちりと造り込まれるように設計・加工された姿を見るだけでも、コンピュータに頼りながらもグローバル化で逆に劣化しつつある現代の製造現場と対比して感動を覚えます。

ここで紹介している実機ですが、このTC-110Aはカナダからの里帰りなのですが、製造後すでに40年を過ぎているというのに、写真でご覧いただいているようにとても40年という歳月が流れた個体であるとはとても信じられないほど程度が良く、一点の錆やくすみのないクロームメッキやアルミボディ、黄ばみのない真っ白な操作ボタン、傷一つない光沢プラスチック、錆の進行も遅い接続ジャック類、そして汚れや傷みのないケースには印刷の残るSONYロゴがくっきりとして、まるで購入して1年も経っていないかのようです。カナダでのオーナーがリフレッシュしたのだとは思いますが、モーターなどのドライブベルトもしっかり仕事をしていて、普通に使用することが出来ます。本当にレアな逸品と言えます。日本国内でTC-100系の中古品を入手しようとしても、まず出品数が極めて少なく出会うことすらままなりませんし、その多くはジャンク扱いのボロボロな場合が殆どです。この個体は米国の有名なオークション・ショップサイト経由で入手したものですが、まだまだこの時代の中古品は手に入りますし、メンテナンス用のゴムベルトなどの消耗品やパーツ、そしてサービスマニュアルすら入手が可能なくらいで、実に驚きです。 

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